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2007年4月

2007年4月29日 (日)

散歩5 今田印刷所

Dsc03375新富町の今田印刷所を閉められてから約一年。
現在今田さんは八丁堀の印刷所にいらっしゃると聞き、お邪魔しました。

この印刷所では活字での印刷ではなく、樹脂版での活版印刷を主に取り扱っているので、活字は最小限しか取りそろえてないそうです。
活字は中村活字さんのもの。



一年前に印刷所を閉じられる時に、多くを捨ててしまったそうです。今になってもったいないと思うことも多々あるとか。
長年活版に携わってきた今田さんの印刷物に対する眼差しは厳しいだけあり、印刷されるものはどれも綺麗なものばかり。日本では今まで、印刷の圧を抑え、押したかわからないように刷るのが活版の基本。しかし、現在活版を求める人が押されたのがわかる印刷を好むのには、最初とまどいを感じていたそうです。
活版工房で教えるようになってから、色々な意見を聞いて最近は圧を強くすることもあるそうです。
今田さんは現在の印刷所も近く辞められるそうですが、活版の事は今後も活版工房で教えて頂けるそうです。長く伝えていただけたら嬉しいです。


取り扱っているのは主に名刺。
紙が横にスライドするこの印刷機はめずらしいタイプ。
あっという間に横に流れて気が付いたら印刷されています。
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調合したインクの色。次も同じ色が出せるようにこうして残している。
少数を印刷するときは手きんを使用。
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※今回は会社名などの記載を控えています。

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2007年4月26日 (木)

イワタ活字工場見学会

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本日はイワタ活字工場の見学会でした。
高内先生、来て頂いた方々、本当にありがとうございました。
始まりはあいにくの雨でしたが、帰りにはやんでいたので良かったです。

Dsc03401_1高内さんからの活字の歴史や母型の作られ方など、一通りお話を聞いた後工場を見学。お話されることも貴重なことばかり。(←名匠・大間先生が彫った木版の文字)一つ一つ方眼紙の上でトレペに3人一組で文字をデザインして描いて、(ちなみに一日で25文字作成していたとか!!)また文字が揃ってきたら並べて検討して、修正して、検討して、、、そこからベントン彫刻機で彫った物を元に、母型を作り鋳造して活字になる。そして印刷。

こうやって人々の手に印刷物が渡っていたのです。今我々がフォントなどを気軽に扱えているのも、こういったもの長い時間大変な労力で作られたものがあってこそなのですね。スゴイの一言です。


Dsc03422_1 工場ではクレジットカードなどの数字の文字活字(スチール製)、鉛活字、スーパー活字、他様々なものが。奥に奥にと沢山のものがあるので、驚きとうれしさでいっぱいになってしまい、何を質問してよいやらという状態になってしまうほど。
→クレジットエンボス文字用の母型(カードには凸版と凹版を上下から同時に印刷する)

14時から始まって17時まで、みっちりと色々見てお聞きすることができました。
でも、まだまだ知りたいことがいっぱいです。
イワタ活字に全てを注いできた高内さん。工場をたたまれてしまうのはとても辛いことと思います。そのイワタの歴史を残したいと、活字研究会を発足して来年出版を目指して20人ほどで活動されているそうです。今から楽しみですね。

また見学会や他の会などを開くことができればと思います。
ありがとうございました。

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2007年4月22日 (日)

宋朝体を組む

Dsc03324_3     先日とある所から貴重な宋朝体の「ひらがな」を入手して工房に行くと、大将(工房の主)もどこからか同じ書体の漢字を入手してました。偶然同じ大きさの3号文字。ひらがなは新品、漢字は使用済みもの。この書体の母型を持っている所も少なく、活字自体、明朝はゴシック体より高いものなのです。
というわけで、お互い貰ってきた物を印刷見本として刷るために組みました。
漢字は何が入っているかわからないので、印刷すればわかりやすくなりということで。
「ひらがな」は、縦書きで組み「いろは〜」で並べました。
「いろは」は未だソラで言えず、家で文字確認をしたときは結局「あ行」から並べてみました。題材として使っているのに、なかなか覚えません。

組み版の時間は私の一番楽しい時間です。
印刷しないと実際の細かい所までわからないのですが、それを想像しながら文字間を空けたりするのはワクワクしてきます。。
本当は計算をちゃんとして組まなければいけないのですが、私は今最初ざっくり計算するくらい。咄嗟に計算できるには、まだまだ修行せねば。

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2007年4月18日 (水)

散歩4 日本名刺印刷センター

Dscn5824 東京メトロの日比谷線/東西線、「茅場町」3番出口横の蕎麦屋を入って少し行くと、気を付けて見ないと通り過ぎてしまう小さな活版屋さんがあります(私は思いっきり通り過ぎました)

小さなこの空間は、機能的かつ魅力的でまるでコクピット。
そこに流れるラジオからのクラシックと杉田さんがまたかっこいい!

杉田さんは現在73歳。同年代の方々が次々店を閉じられるのを寂しく感じながらも、大好きな活版印刷を営んでいます。名刺とハガキなどが主で、営業は午後13時頃まで。
また、「僕は趣味だからね」と出てくるコレクションのような活字の数々。
こだわりと活字に対する情熱がこもった印刷物はとても美しいのです。



Dscn5808 「正楷書体の18ptでウチでない文字はないよ」という品揃えに続き、「色の調合と酒の調合も上手いんだ」とお酒と旅好きの杉田さんは洒落っ気たっぷり(棚の隙間に酒瓶がチラリ)。30、40年後に自分もこんなステキな大人に(今も大人だけど)なれるだろうか。
人も活字も魅力ある活版家の作る名刺を、手に取ってみませんか。



隙間があれば、活字が置いてあるほどギッシリ。
奥にある印刷機は自動。名刺を吸盤のように吸い付け一枚づつさして印刷します。

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名刺などでよく使う6ptの書体。細かいけどキレイ。
今や貴重なものとなった木の活字。これは近くの石黒木版で彫られた物。
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Dscn5796_1 日本名刺印刷センター

名刺/はがき/挨拶状/封筒などの活字での印刷
東京メトロ日比谷線/東西線「茅場町」3番出口徒歩1分
※営業時間は日によって違うので、必ず電話をしてくださいTEL : 03-3666-2769




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2007年4月16日 (月)

活版工房第2回を終えて

夏のような暑さの14日土曜日に、無事活版工房第2回を終了することができました!参加者の皆さまありがとうございます。

第1回はパーティーのように沢山の方々に来て頂いて体験会を行いましたが、今回は少人数でじっくりとという内容で、封筒に住所・名前などを印刷する初心者クラスを開催しました。
とにかく道具から作り方の基本をじっくりやるのがこのクラス(ウンチクも)。初心者クラスは作るものに自由度がないですが、活版とはなんぞや?を細かい所まで教えようというもの。どうやったらうまく伝わるか、流れを作れるかなど、前回の後皆で話し合ってきました。
その中でも全員が課題にしていたのは「どれだけ楽しい時間にできるか」。
まだまだの所はありますが、何とかできたかな。。。と。スタッフは色々な方々とも出会えてとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
活版って楽しい!って言って貰えるのが一番うれしいのです。

次回に向けて、またがんばります。

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2007年4月11日 (水)

散歩3 イワタ活字

Dsc03214_1 創業、明治2年。長崎活版伝習所から始まりイワタ書体を世に送り続けている「イワタ販売株式会社」。

大正9年に岩田母型製造所という販売所が設立され、その後今のイワタ販売さんとなりました。

大森と蒲田の間に位置する大森工場では活字の鋳造・販売をなさっています。










Dsc03211_1_1扉を開ければ活字がズラリ。圧巻の一言です。
その数のすごいこと。これが二階分あるというのですからどこに何があるかわからなくなりそうです。棚に並ぶ活字はピカピカで眩しいくらい。初号からルビの大きさまで、様々な活字が並んでいます。

また、オリジナルの活字や新聞用のものなど、種類も豊富。「イワタ新聞書体」や「イワタ明朝体オールド」など、現在はDTPで復刻されてるものもあります。







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そして奥には鋳造機もまたズラリ。およそ20台近くはある機械は、長年動いてきているのが感じられて、懐かしさすら感じます。
鉛をガスで溶かして母型を元に活字が一つ一つ作られていくのですが、鋳造→印刷で使用→溶かしてまた鋳造と完璧なリサイクルの流れ。全体の流れと効率をよく考えられているのも、この技術の素晴らしい所なのです。(現在もし活字を捨てるなら産業廃棄物となってしまいます)

ですが、その技術を受け継ぐ所は少なくなり、残念な事にこの工場は今月で閉められるそうです。伝統ある歴史が一つなくなるのは、本当に寂しくてなりません。






活字の棚の数々。
ものすごい量の活字が並んでいて、「何を見たい?」と聞かれてもどれを見て良いやら迷ってしまいます。全て把握なさっている文選の方はスゴイ。

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左:溶かす原料、鉛を入れます。活字の鉛には強度を上げるためにアンチモン、錫が混ざっています。 右:活字がカタカタと出来上がって来ます。
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文選箱に入れるのも自動で出来ます。
例えば5号、1列20づつなど、ツマミで設定。Dsc03195_1

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手動の鋳造機!!稼働中です。

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Dsc03213_1 イワタ販売株式会社
大森駅より東急バス池上方面で大田文化の森下車徒歩5分

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2007年4月 5日 (木)

散歩1 中村活字

Dsc01614_1銀座の松屋の脇を築地方面に歩き、昭和通りを越した向こうには、中心地とは違った昔ながらの銀座の雰囲気が残っています。

ここで100年の歴史を持つ活字屋さんが「中村活字」さん。
昔は東京築地活版製作所の近くということもあり、活版家の多い街だったかもしれません。



Dsc01611お店を訪ねると、カウンター越しに壁一面見える活字箱が、活字文化と歴史を感じさせる空間。

時代の流れから鉛や木の活字を一つずつ拾って組む活版はかげりを見せ、オフセットが主流となっています。それでも中村さんは少しでも活字の文化を伝え残せればと続けてきているのです。

今ではこの活字を求め毎日よのうにお客さんがやってきます。遠方から来る人も少なくありません。Webサイトを持っている活字屋さんは珍しく、口コミもあり取材も多いこの頃。

だがそれも店主の中村明久さんの人柄と、丁寧な対応で手に取った人が喜ぶような仕上がりと印刷の美しさから。お客さんとの会話も大事にしているのです。

中村さんの活字はとても綺麗でピカピカなものが多い。それも自社で活字を鋳造できる強みでしょう。
「若い人たちが、活字で印刷されたものを綺麗だと言ってくるのはとてもうれしいですね。それに我々にはない考えがまた興味深いです。」

古きを大切に新しいものを取り入れ活字文化が伝えられていく。もうすぐ100周年の時には、お客さん皆で何か企画をしたいものです。


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部首ごとに並べられてる活字箱。
たくさんの箱から文字を拾えるのも匠の技の一つ!





この文字の元となる「母型(凹版)」。ここから活字が作られます。

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母型から活字を作る「鋳造機」。
鉛をガスで溶かし、地金は活字の大きさに形成したところに母型を押しつけ、水で冷やして活字となります。
使わなくなった鉛も溶かして再び使うので、
鋳造機は中村さん曰く「究極のリサイクル」!




鋳造したての活字。美しい!! 今では貴重な花型です。

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後日活字をお借りして、
Luftkatzeがグリーティングカードに使用させて頂きました。

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株式会社 中村活字
活版印刷の他、銅板印刷、凸版印刷、ゴム印製作などからオフセットまで。
印刷の事ならなんでも相談に乗ってくれます。
http://www.nakamura-katsuji.com/index.html
TEL: 03-3541-6563

 

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2007年4月 4日 (水)

散歩のはじめ

初めまして、活版散歩です。

活版印刷とは、13世紀から伝わる木や鉛や銅で出来た活字を使用した凸版で印刷される技術。
今ではパソコンでちゃっちゃと印刷もレイアウトも出来ますが、一昔までは活版印刷が主流でした。
長い間印刷を牽引していたこの技術ですが、写植から一気にDTPからのオフセットへ移ってとても便利になりました。私たちが色々な印刷物を手軽に触れることができるのは、この技術の発展によってです。

今、活版印刷も見直されつつあり、雑誌などでも取り上げられることも多いのとは裏腹に、次々とのれんを下ろしている印刷所や活字屋さんも多くあります。
実際、手間暇かかる印刷ですから、スピード社会の今、普通に使うのには難しい所もあると思います。
しかし、この一つ一つの文字を組み合わせ、ハンコと同じ原理で押すことによって刷られた物は、風合いがあってとても美しいのです。手に取ったときには、印刷されたという実感がしっかりと感じ取れます。
今後沢山の人が触れて、活用する機会を持たなければ存続もできないでしょう。

日本にはまだまだ印刷所があります。
せっかく長きに培われた技術の話や、道具に触れさせていただきたくて、訪問散歩をしていきます。
テーマは「活版を訪ねて三千里」。
DTPとは違う特徴なども、紹介していきたいと思います。

更新は不定期になりますが、たまに覗いてみて下さい。

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